蒲田駅西口には、仕事帰りの理性を静かに揺さぶる店が多い。
焼き鳥、餃子、立ち飲み、町中華。どこからともなく漂ってくる香ばしい匂いに誘われて歩いていると、目に入ってきたのが「築地銀だこ ハイボール酒場」だった。

銀だこといえば、外はカリッ、中はトロッとしたたこ焼きでおなじみである。しかし、「銀だこ」「ハイボール」「ちょい飲み」という言葉が一緒に並ぶと、そこはもう単なるたこ焼き屋ではない。
今回は蒲田西口の銀だこで、千円以内の軽い一杯、いわゆる“せんべろ”を楽しんできた。
ただし、たこ焼きは頼んでいない。
居酒屋よりも気軽に入れる「銀だこハイボール酒場」
「少しだけ飲みたいけれど、居酒屋に腰を据えるほどではない」
そんな日に銀だこハイボール酒場は使いやすい。
たこ焼きを買う店という親しみやすさがあるため、一人でも入りやすく、短時間の利用にも向いている。店へ入るときも、「飲みに来たのではなく、たまたまたこ焼きが気になっただけです」という顔ができる。
その数分後には、しっかりハイボールを握っているわけだが。
蒲田西口店では、訪問時、11時から18時までハッピーアワーが実施されていた。今回選んだのは、メガ角ハイボール460円。通常サイズではなく最初からメガを頼むあたりに、“軽く一杯”という言葉の曖昧さが表れている。

運ばれてきたグラスには氷がたっぷり入り、炭酸もしっかり効いている。高級なバーのハイボールのように、ウイスキーの香りや氷の透明度をじっくり語るタイプではない。

冷たい。シュワッとしている。仕事終わりにうまい。
それで十分である。
銀だこなのに、たこ焼きを頼まない
おつまみに選んだのは、坦々味噌もやし280円だった。

銀だこへ来て、たこ焼きを注文しない。少し後ろめたさはあるものの、せんべろという目的に限れば、これはかなり合理的な選択である。
たこ焼きはおいしい反面、それなりにお腹へたまる。しっかり食事をしたい日にはうれしいが、今回はあくまで「軽く飲んで帰る」がテーマだ。
その点、もやしなら重すぎない。価格も手頃で、濃いめの味付けは酒にも合う。主役として華々しく登場する料理ではないものの、ちょい飲みの相棒としては優秀である。
銀だこの看板を掲げる店で、あえて脇役を指名する。少々ひねくれた注文にも見えるが、蒲田の酒場では、これくらい自由な方が居心地がいい。
坦々味噌もやしが予想以上の“酒泥棒”
運ばれてきた坦々味噌もやしは、見た目からして味がしっかりしている。
シャキシャキとしたもやしに、辛さとコクのある坦々味噌。一口食べてからハイボールを飲むと、濃いめの味を炭酸がさっぱりと流してくれる。
そして、もう一口。またハイボール。
もやし自体は軽いのに、味噌ダレのおかげで、つまみとしての満足感は十分にある。むしろこの料理は、メガハイボールを順調に減らすために作られているのではないかと思うほどだ。
せんべろに必要なのは、必ずしも満腹感ではない。限られた予算のなかで、お酒を気持ちよく飲めることも大切である。
その意味で、坦々味噌もやしは実に頼もしい。
合計814円。千円でお釣りがくる
今回注文したのは、メガ角ハイボール460円と坦々味噌もやし280円。税込合計は814円だった。

千円札で支払っても、きちんとお釣りが返ってくる。たこ焼きは食べていないが、軽く一杯楽しむという目的は十分に果たせた。
一人で入りやすく、注文しやすく、長居をしなくても気まずくない。銀だこは、たこ焼きを食べなくても成立する酒場だったのである。
もちろん、銀だこへ来た以上、素直にたこ焼きとハイボールを合わせるのも間違いなくおいしい。しかし、お腹を重くしたくない日や、このあと食事の予定がある日には、こうした使い方も選択肢に入る。
蒲田西口で「軽く一杯」にちょうどいい
蒲田西口の築地銀だこは、居酒屋へ入るほどではないけれど、まっすぐ帰るには少し惜しい。そんな夕方にちょうどいい店だった。
メガ角ハイボールを飲みながら、坦々味噌もやしをつまむ。銀だこらしさは少々薄いものの、酒場としてはきちんと成立している。
ただし、ひとつだけ問題がある。
もやしで軽く済ませたため、店を出てもお腹にはまだ余裕がある。そして目の前に広がっているのは、誘惑の多い蒲田西口だ。
焼き鳥もある。餃子もある。ラーメンも待っている。
814円できれいに終われるか、それとも二軒目へ向かってしまうのか。せんべろが成功するかどうかは、銀だこではなく、最後は自分の意志にかかっている。
蒲田西口は、そうした人間の弱さを決して見逃してくれない。
※価格、メニューおよびハッピーアワーの実施時間は訪問時の情報です。最新の内容は店舗でご確認ください。


