蒲田には、店に入った瞬間から「今日はもう、細かいことを考えなくていい」と思わせてくれる酒場がある。
その代表格が、鳥万である。

鳥万は、いわゆる“ちょっと一杯”で入った人間を、かなりの確率で“しっかり一杯”へと導いてくる店だ。メニューは多い。料理は安い。店内には大衆酒場特有の活気があり、周囲を見渡せば、みんながそれぞれの一日を酒で締めくくっている。
本日は、蒲田の登竜門「鳥万」をレポートする。
メガハイボールが本当にメガすぎる
店に入ると、最初に目に飛び込んでくるが、年季の入った数多くのメニューの札。この光景一つで、鳥万が歩んできた長い歴史を感じることができる。

よく見るとサインも書いてある。
右のサインには「いい夢見ろよ!アバヨ❤️」と書いてあるようだ。
確かに、そんなセリフをよく吐くタレントがいたような気がする。

席に着くと、まずはハイボールを注文。
鳥万でハイボールを頼むなら、普通サイズではなくメガサイズを視野に入れたい。
もちろん、無理に頼む必要はない。酒に弱い人は普通サイズでいい。翌朝に重要な会議がある人も、普通サイズにした方がいい。
しかし、メニューに「メガ」と書いてある以上、蒲田まで来た人間としては少し気になる。
そして注文すると、想像以上のものが出てくる。
とにかく大きい。

「ジョッキ」という言葉では収まりきらない。
飲み物というより、もはやハイボールの貯水施設である。
テーブルに置かれた瞬間、周囲の料理が小さく見える。焼き鳥3本が、巨大建造物の前に立つ観光客のようになる。
グラスを持ち上げるだけでも、ちょっとした筋力が必要だ。最初の一口を飲む前から、腕が酒を飲んだ後のように重くなる。
だが、冷たいハイボールを一口飲むと、炭酸の刺激が一日の疲れを押し流してくれる。
うまい。
ただ、おそらくこのデカさは写真では伝わらない。
この後に登場してくる鶏煮込み豆腐と比べるとどうだろう?

デカさは伝わるだろうか?
ただ、今回のレポートではこの超巨大ハイボールは重要ではない。
焼き鳥を食べる。
煮込みを食べる。
そして勢いよく流し込む。
あくまでそのためのハイボールである。
焼き鳥3本は酒場の基本装備
続いて焼き鳥3本。
鳥万という店名なのだから、鳥を食べないわけにはいかない。
焼き鳥は、酒場における非常に優秀な料理だ。串に刺さっているため食べやすい。味がしっかりしているため酒に合う。そして本数を調整しやすい。
今回は1本110円の串を3本頼んでみる。

多すぎず、少なすぎず。
メガハイボールを受け止めるには、ちょうどいい数である。
焼き鳥を一口食べる。
ハイボールを飲む。
また焼き鳥を食べる。
大衆酒場において、これ以上説明のいらない組み合わせはない。
焼き鳥3本だけでも十分に酒は進む。だが今回、本当の主役は別にいる。
鳥万に来たら鶏煮込み豆腐を食べてほしい
今回、特におすすめしたいのが鶏煮込み豆腐である。

名前だけを見ると、かなり地味だ。
鶏。
煮込み。
豆腐。
華やかな単語は一つも入っていない。
「炎の」「極上」「濃厚」「特選」といった、こちらの食欲を強引に刺激する装飾もない。ただ、鶏煮込み豆腐。
しかし、こういう料理がうまい店は信用できる。
煮込みの汁には鶏のうまみが溶け込み、豆腐にはその味がしっかり染みている。派手ではないが、食べるとほっとする。
そして何より、ハイボールとの相性がいい。
焼き鳥は香ばしさで酒を進ませる。
鶏煮込み豆腐は、温かさとうまみで酒を進ませる。
同じ鶏料理でも、役割が違う。
焼き鳥が攻撃なら、鶏煮込み豆腐は回復である。
もっとも、回復しながらメガハイボールを飲んでいるので、総合的には体力が回復しているのか減っているのか分からない。
それでも、煮込み豆腐を口に入れた瞬間だけは、「今日も一日よくやった」と思える。
鶏のうまみが染みた汁と豆腐は、疲れた大人に対して非常に優しい。
蒲田は街全体の情報量が多く、看板も人も酒も強い。そんな街の中で、煮込み豆腐だけが静かにこちらへ寄り添ってくる。
1,730円でここまで満たされる
今回の会計は税込1,730円。
千円以内ではないため、せんべろとは呼べない。
しかし、内容を考えてほしい。
焼き鳥が3本。
巨大なメガハイボール。
鶏煮込み豆腐。
酒も十分。
つまみも十分。
温かい料理もある。
これだけそろって1,730円なら、かなり満足度が高い。
最近は、普通サイズのハイボールを2杯飲み、つまみを2品頼むだけで3,000円近くになる店も珍しくない。
それを考えると、鳥万の価格はありがたい。
税込1,730円で、胃袋も気分もかなり満たされる。
ただし、注意したいのはメガハイボールの量である。
一見すると大きい。
飲み始めても大きい。
半分を過ぎても、まだ大きい。
注文したときは「これくらい飲めるだろう」と思うのだが、後半になるとジョッキがこちらの覚悟を試してくる。
軽い気持ちで頼むと、帰り道の蒲田駅がいつもより遠く感じる可能性がある。
鳥万は料理を追加したくなる店
鳥万で飲んでいると、周囲のテーブルに次々と料理が運ばれてくる。
刺身。
揚げ物。
煮込み。
焼き物。
そのたびに、「あれも頼めばよかった」と思う。
今回も、焼き鳥3本と鶏煮込み豆腐で十分だった。それでも、メニューを見れば別の料理が気になる。
これは危険である。
税込1,730円で終えるつもりが、もう一品、もう一杯と追加すれば、当然ながら会計は増える。
しかし、それも鳥万の楽しみ方だろう。
安く飲むことだけを目的にしてもいい。
いろいろ注文して宴会状態になってもいい。
鳥万は、どちらの人間も受け止めてくれる。
鳥万では鶏煮込み豆腐とメガハイボールを頼め
蒲田の鳥万で注文した、焼き鳥3本、超巨大なメガハイボール、鶏煮込み豆腐。
合計は税込1,730円だった。
なかでも印象に残ったのは、鶏煮込み豆腐とメガハイボールの組み合わせである。
巨大なハイボールで豪快に飲み、温かい鶏煮込み豆腐で落ち着く。
攻撃と回復。
炭酸と煮込み。
冷たい酒と温かい豆腐。
このバランスがいい。
焼き鳥3本を間に挟めば、鳥万の楽しさがかなり詰まった注文になる。
結論。
蒲田の鳥万に来たら、鶏煮込み豆腐を頼め。
そして、翌日の予定と自分の酒量に問題がなければ、メガハイボールを喰らえ。
税込1,730円で、かなり立派な蒲田の夜が完成する。
ただし、メガハイボールは見た目以上にメガである。
飲み終えたあと、自分まで少しメガになったような気分で店を出ることになる。


